龍馬とおりょう、海の魔法

今週のお題「海」

「うーみ。」大海原を前に龍馬(福山雅治)は大きく口を動かして見せた。

隣にいるおりょうさん(真木よう子)に笑い方のコツを伝授しようとしたのだ。

殺伐とした世の中でおりょうさんには笑っていて欲しかったのだろう。

    海、と聞いてすぐに思い出したのが大河ドラマ龍馬伝』の中のこのシーンである。

  『龍馬がゆく』以来、歴史上、坂本龍馬ほど有名な日本人も少ない。

土佐脱藩浪士の一人でありながら、日本を「いま一度洗濯」した人物というわけだから、その影響力の大きさを考えれば、憧れて当然の人物である。

また、描かれている龍馬像はかしこまらない気さくな性格とあってか、後世に生きる我々は彼のことを「龍馬」とあえて下の名前で呼ぶ。

何か、龍馬とは親しく付き合っていけそうな気がするからだろうか。

ともかくも、それだけ愛着のある龍馬だけに、過去、幾度となく映画化、ドラマ化されている。

だからほとんどの日本人は信長と同様に龍馬の生涯については熟知している。

ということは、新たにドラマ化するときはいかにドラマチックに龍馬の生涯を演出するかにかかってくる。

この点、『龍馬伝』では後の三菱創業者・岩崎弥太郎(香川照之)の視点から龍馬の生涯を描いた力作である。

その物語も終盤に差し掛かるといよいよおりょうさんが出てくる。おりょさんとのつかの間の結婚生活。やがて訪れる龍馬暗殺の時。

    実は最初に紹介したシーンには続きがある。

それは龍馬が暗殺された後の話である。

再び、海を見つめるおりょうさん。

だけど、今度は一人で。

じっと海を見つめている。

ざぶーん、ざざざざぁー。

波の音だけが聞こえる。

はた、と気配がする。

ふと、隣を見るおりょうさん。

そこには龍馬の姿が…。

龍馬はおりょうさんににっこりと微笑んで、大きく口を動かした。「うーみ。」

おりょうさんはじっと龍馬を見つめながら口を開いた。「うーみ。」

おりょうさんの口元にはにっこりと微笑みがこぼれていた。