あのスターウォーズの(さらにいくつもの)片隅に

今週のお題「クリスマス」

 

 戦前にもサンタが街にやってきてたんですねぇ。

というのは、映画『この世界の片隅に』の冒頭で、何と『年の市 大特價』(價とは旧字体で現在は価)と書かれたプラカードを掲げて、ベルを鳴らしながら呼び込みをするサンタの格好をした男性が描かれていました。

 

 12月20日公開の「さらにいくつもの」版を見てきました。

「かなぁ〜しくぅてぇ〜、かなぁし〜くてぇ〜。(悲しくて、悲しくて)

とぅてぇ〜もやぁ〜りきぃれぇ〜なぁい。(とてもやりきれない)」

何故でしょう。こんなにも心が揺さぶられるのは。

描いているテーマは、戦争。それも、広島の呉です。

流れるテーマソングの歌詞はご覧の通りです。

悲劇いっぱいのこの時代を描いた作品はたくさんありますが、そのほとんどが悲劇が滲み出るような作りになっています。

悲劇を悲劇的に描く。そして、それを見た私達はその悲劇をそのまま受け止める。

でも、この作品は、そうではありません。

ぼんやりした、マイペースなすずさんの日常の中に悲劇を取り込んでしまっています。

すずさんによって自然と悲劇が濾過されて、私たちに伝わります。

少し鈍いけど、がんばり屋さんのすずさんは、私たちにとって大変親しみやすく感情移入するのに時間はかかりません。

戦争映画とは一見矛盾するようなクスッと笑ってしまうユーモアが各所に散りばめられています。

このユーモアがかえってすずさんに降りかかる悲劇を色濃く演出しているように思います。

コントラストのテクニックというのでしょうかね。

あののんびり屋のすずさんの涙は見るに堪えません。

今回の「さらにいくつもの」版では主にリンさんとの嫉妬混じりの友情、病床の遊女・テルさんへの気遣い、といったすずさんの人間味あふれる部分が追加されていました。(原作からカットされていた部分ですね。)

 

 

軍港であった呉への容赦ない爆撃。

広島への原爆投下。

あの当時、日本とアメリカは戦争をしていましたが、今では同盟関係にあります。

 

この映画の公開日が12月20日。くしくも、あのスターウォーズの公開日と同じであったことは、果たして偶然だったのでしょうか?